パトリシア・A・マキリップ (著), 原島 文世 (翻訳)
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確かに一風変わってはいるけれど、これは灰かぶりのお話だ。
ふふふ。
そしてこの作品もまたマキリップの他の多くの作品と
同様、異類婚姻譚の一面をもっている。
マキリップの手にかかれば、灰かぶりもただのお話しでは
終わらないことは一読すれば明らか。
繊細さと煌きに彩られた華麗な言葉の連なり。
大胆な着想。
マキリップによって描かれる、ペルシールをはじめとした
世界に満ちる魔法のかおり。
いつもながらあっという間にマキリップの世界に引き込まれ、
堪能したよ。
ヒロインのサローは理不尽にも言葉を奪われている。
そして本来の姿も能力も奪われている。
すべては物語のはじまりで語られる、
アトリックス・ウルフがとったとある行動のせいなのだが……。
サローが一所懸命に仕事をこなすところに好感を抱いたよ。
読み進めるあいだずっと「早く言葉と本来の姿を取り戻してほしい」と
心のなかでサローのことを応援していた。
サローってば可愛いのう。
アトリックス・ウルフが魔法で千変万化するさまは
スターベアラーでモルゴンが同じく姿を変えたのと同じで、
水が流れるように次々と姿を変える。
マキリップが考える魔法というものを、映像として
心のなかで再現してみるとき、
その美しさに息を呑まずにはいられない。
ただ美しいだけではない。
マキリップの作品には情感が溢れている。
読んでいて、楽しい。
だから、ずっとマキリップの作品を僕は読み続けている。
読み返し続けている。
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