
『うちの一階には鬼がいる!』
ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
原島文世 訳
日本語版単行本版の大きさに怯み、
表紙絵とタイトルから想像して「なにか怖い話なのか」と
思ってなかなか手をだせずにいたのだけれど、
このたび文庫化されたというので
ダイアナ・ウィン・ジョーンズの『うちの一階には鬼がいる!』を
読んでみました。
それにしても、ああ、最近
「ハードカバーの本が重すぎて読めない」というパターンが
多すぎるような……?
本の重さに負けて読むのを躊躇ってしまうという事例が多いのは、
読書に割ける時間が通勤電車のなかに限られている昨今の
私的事情がそうさせているのでしょう。
この『うちの一階には鬼がいる!』も、はじめは妻の書架で
ハードカバーの単行本版を見つけたのに、ハードカバーという点だけで
読むのをずっと躊躇っていたからねえ。)
一読しました。
あら、まあ。
そんなに怖い話ではなかったのね。
そりゃ児童書だもの、そう怖くもないのか……。
ジョーンズ作品にしては、ドライな視点はあまり感じられず
お話はすいすいと素直に進む。初期作品だからかしらん。
ハートウォーミングな物語でした。
鬼扱いされているけれど、義父のジャックはそう悪い人でもないんじゃないの?
再婚相手が連れている三人の子と自分の子たち二人を
あわせて五人の子持ちになったんですよ。
いろいろ欠点はあるけれど、かなり頑張っているお父さんなんじゃないかしら。
『うちの一階には鬼がいる!』(原題:The Ogre Downstairs)が
発表されたのがいまから約四十年前という時代背景を考慮に入れても
「鬼」と評されるこの作品の義父は、相当頑張っているほうだと思う。
しかし、そういう視点でこの作品を読んでいるってことは
大人の視点であって、小さい人の視点じゃないみたいよ、と妻に笑われた。
そうか、そうなのか。
いつの間にか「コドモのココロ」を失っていたのか僕はッ。
うえーん、うえーん。
おっと。
この作品の主題は、はじめ対立していたコドモたちが
仲良くなっていく過程にあるのだと思いますが、
ジャックさんが買ってきてくれた魔法の実験道具が
要所要所でお話しの鍵になっています。
たとえオトナ視点の僕であっても、「わーお!」と
楽しめる魔法の仕掛け。
(ねえ、ここで楽しめるってことは、僕の視点がいつでも
「オトナ視点」ってわけじゃあなくて、たまには
「コドモ視点」や「コドモ思考」を取り戻して
純粋に物語を楽しめているってことなんじゃないのかな。
えぐえぐ。)
うちの一階には鬼がいる! 東京創元社
http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488572143
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