2015年10月12日

『仮面の帝国守護者』サバア・タヒア:著 原島文世 :訳

AN EMBER IN THE ASHES.jpg

仮面の帝国守護者  (上)(下) (ハヤカワ文庫FT)
サバア・タヒア:著
原島文世 :訳




ふおおおお。
読みました。面白かった〜。

ヤングアダルト作品と聞いていたから
「ふーん、べたべたの甘々で、ざくっ、ぶしゅっ、
(魔法で)ドカーン!
んでもって、ラブラブでぶっちゅー&イヤーン……な
剣と魔法の世界なんでしょ?
でしょ?!」

なーんて軽く考えて読み始めてスミマセン、すみません。
良い意味で裏切られましたよ。
いいな、サバア・タヒア。
一読したあと、「あれはこれでこうしていたら、こうなっていたのでは?」とか
「これがこうだったっていうことは、アレはああなのかしら? いやもしかして……」とか
「あの行動は、ああだったからこうなのだわ!」とか、久しぶりにいろいろと
考えさせてくれたよ〜。いい作品だなコレ。
いろいろ突っ込みどころはあるものの、おおむね面白いのではないかと。

健全な(?)男子なら、必ずやヒロインのライアではなく
ヘレネに入れあげると思うのよう、思うのよう。
たとえ仮面をつけていて外れないとしてもなッ。
別に判官贔屓というワケでもないし、なんだろねこの感情。
こう……強くて綺麗な(仮面で顔は隠れてるけどな。)女性に
あこがれちゃう文系男子(すみません)のハートが
そう思わせているのであろーか……と、超適当なことを書いてみるテスト。
(だって、ライアのいいところって……どこッ!?
たとえ不幸な境遇であっても、あなたってば恵まれ過ぎなヒロインのよう!<ライア
あ、だからヤングアダルトなのか。そうか。そうだったか。)

うーん、突っ込みどころのうち、軽い突っ込みくらいは書いてもいいのだろうか。
下巻 P16 L10、銀色の仮面しているのにヘレネの顔じゅうあざとひっかき傷だらけとは
これ如何に。仮面が皮膚と一体化しているんでしょうか。
あ、それとは関係ないんですが、僕の悪いクセで
小説の登場人物を既存の漫画作品のキャラクターの外見に
似せて再生しながら作品を読むというクセがあって、
『仮面の帝国守護者』で仮面兵のみなさんの「仮面」というものをつけたあとの
外見を、あんど慶周『究極!!変態仮面』の主人公が変身したあとの顔で
読み進めてしまったのでした。まる。


主人公であるエリアスが所々で毒づくのが個人的にはヒット!
いいね、こいつ面白いです。

卜占官の正体ってきっと分散したアレなんだろうなとか、
ヒロインてばいろいろブレすぎとか、
エリアスのじいさんカッコいいなとか
ファリスいいやつ美味し過ぎとか、
イジーかわいいんじゃね?とか言いたいことは沢山ありますが、
ああ、面白かったので続きが気になるようってことが、一番言いたいことかな。
頼むよー。>ハヤカワ


ああ、あと、いつものハヤカワのサイズじゃなくて
ちょっと大きめだったので愛用している文庫カバーに入らなかったですよう。
フォントも少し大きめなのは、ハヤカワFTやSFの愛読者層が高齢化してきているのに
対応しているのであろうか……。細かくびっしりと目の詰まった版組されている
文庫が大好きなのだがのう。
ぴよぴよ。






AN EMBER IN THE ASHES
http://anemberintheashesbook.com/



Amazon.co.jp 仮面の帝国守護者
http://www.amazon.co.jp/dp/4150205809/
http://www.amazon.co.jp/dp/4150205817/


Hayakawa Online
仮面の帝国守護者 上
http://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000013028/
仮面の帝国守護者 下
http://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000013048/


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2015年03月08日

『東日本大震災 石巻災害医療の全記録』石井 正 (著)

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『東日本大震災 石巻災害医療の全記録』石井 正 (著)


あの日、何が起こったのか、あの後どのような事柄が起きていたのか、
人はどう対応したのか。対応できたのか。
あの日からあとのことを自らに問うために、少しずつではありますが
あの日に関連した書籍を集め、読んでいます。



東日本大震災 石巻災害医療の全記録
石井 正 (著)
http://www.amazon.co.jp/dp/4062577585/



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2015年02月27日

『地底旅行』ジュール・ヴェルヌ

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地底旅行  (創元SF文庫)
ジュール・ヴェルヌ 著
窪田般弥 訳



う、ううむ。
なんていうか、あの時代だったからこその作品だよな……。
「旅行」と言いながら無理ゲーすぎる超展開。
いきなりコレはさながら死出の旅だよな、断れないのかアクセル君てば。
恥ずかしながらこの年になって初めて読みました。

いろいろ言いたいことはありますが、
「教授、無謀に過ぎるッ」
「グラウベンが空気……」
「ハンスが居なかったらアナタたちどうなってるのよコレ」
「みなハンスのおかげ」
「ハンスがいいとこ全部取りだな」
ってところかしらね。
教授ってばはじめから上るって帰ってくること想定してないべ、おいおい、みたいな。
ほぼ垂直の穴を滑り降りたあたりとかで確信しましたよわたくし。ええ。

リデンブロック海をいかだで行くときもそうだったけれど
みんなで地上で戻ってくるあのシーン、あれ、ギャグだよね?
ね、そうでしょ、ギャクなんでしょ?(涙目)


ジュール・ヴェルヌは、『二年間の休暇』のほうが好みでござる。
ちょっとBLっぽい展開な気がしません?<『二年間の休暇』
あ、しない? し、しないか(涙)。
ぼくってばすぐ余計なこと&アヤシゲなことを口走るんだよな。
ハッ!
あ、あかん、あかん。
許してください(土下座)。







『地底旅行』(創元SF文庫)  Amazon.co.jp
http://www.amazon.co.jp/dp/4488606024


『二年間の休暇』  福音館書店
ジュール・ベルヌ作 /太田大八画 /朝倉剛訳
http://www.fukuinkan.co.jp/bookdetail.php?goods_id=884


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ゼンダ城の虜(東京創元社)

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ゼンダ城の虜(東京創元社)
アンソニー・ホープ 著
井上勇 訳


ぼくが今回読んだのは井上勇による完訳版ですが、
義母は原書で児童用の抄訳をすでに読んでいたそうです。
ただ、ストーリーはもううろ覚えだとか……。

確かに訳は古い、古さを感じるけれどそれで
作品の面白さが半減するわけでは決してない。


主役のほうのルドルフのいい男っぷりは、
バロネス・オルツィ『紅はこべ』のパーシーを思い浮かべながら読みました。
時代は異なりますけど。その正体を隠して華麗に異国へ……ってあたりが
似ていると感じたのかしらねえ。

でもちょっとツメが甘いよねえ、ルドルフ。
倒せるときに敵を倒しておかないとかさ……。
書かれた時代がそうした時代だったのかもしれないけどさ……。

しかし。
百数十年前に著された物語がいまも愛読されているのも
納得の出来栄え。
筋立てと、なにより登場人物たちの特徴あるキャラクターが
魅力的でぐいぐい読ませるんですね、これ。
いちどは読んでおくといいよなあ、学生時代にでも。
落ち着いた年齢になってから、忍ぶ恋についてあれこれ思いながら読むのもいいけど。




ぼくは凡人なのでこうしたルリタニア風のロマンスに
憧れはしても、平々凡々で身近な幸せがずっと傍に
あるのが良いなと思ってしまうのでした。





ゼンダ城の虜  東京創元社
http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488505011
アンソニー・ホープ 著
井上勇 訳

ゼンダ城の虜 Amazon.co.jp
http://www.amazon.co.jp/dp/4488505015
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2015年02月11日

怪奇探偵小説傑作選1と5「岡本綺堂集」「岡本綺堂集」ちくま文庫

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ふう。
ようやく読み終えた。
自分が苦手なジャンルの本を読むときって、
どうしてこうも進みが遅いのだろう。
ページを繰る手が止まる、止まる……。
体が拒否反応を起こしているのかしらん。
でも買った以上は読んだほうがよいのかと
無理して読みましたよ。ええ。

 ちくま文庫
  怪奇探偵小説傑作選5
  海野十三集 三人の双生児(日下三蔵 編)


エロ、グロ、なんでもござれなかんじですが
あの時代ゆえのハチャメチャ感が良いんですかねえ。
自分には合わない感性とネタだったので
よく理解できませんでした。
(展開も読めちゃうしさ。)
もう、生理的にダメだったなあ。
とくにグロなネタね……。
胎児とか奇形とかネタにしちゃあ、きついです。
よよよ。
『三人の双生児』のラスト5行だけは、まぁ、いいかな。
許せるかな。

海野十三に比して読みやすかったのが

 ちくま文庫
  怪奇探偵小説傑作選1
  岡本綺堂集 青蛙堂鬼談(日下三蔵 編)

いやあ、こちらはすいすいと読めた。
読みやすかった。
もともと岡本綺堂が好きなせいもあるのでしょう。
その「半七捕物帳」や随筆が好きで好きで。
今回の傑作選の中に収められたもののうちでは
『一本足の女』、『経帷子の秘密』、『慈悲心鳥』が良かったですねえ。
いまはたと気づきましたが、
いずれも女の情念がぐっと迫ってくるのが共通項でしょうか。





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2014年12月07日

『世界悪女物語』澁澤龍彦

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『世界悪女物語』澁澤龍彦

これは文春文庫ですが、単行本の初版は桃源社から
1964年4月刊行とのこと。
おお、半世紀前の本か。

12人の歴史上の女性について記述されています。
その昔、たとえばメアリ・スチュアートに関して
詳細に書かれた別の著者がものした単行本を
読んだりしていたせいか、この本をいま読むと
いずれも割とさらりと流したように書かれていると
感じてしまうのは仕方がないことなのか……。
書かれた時代を思えば、紹介文としては十分なのか。
これを読んで興味を持ったら専門書にあたればよいのだから。

澁澤さんの文体は、どぎつくはないよね。


印象的だったのは、ブリュヌオー。
澁澤さんの文体が綴るその美々しさが、わたくしの
アタマの中をあまねく光照らしましたのことよ。


Wikipedia ブルンヒルド
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%AB%E3%83%B3%E3%83%92%E3%83%AB%E3%83%89

『世界悪女物語』澁澤龍彦
http://www.amazon.co.jp/dp/4167140055



本はさまざま読んでいるはずですが、こうしてメモしておかないと
何を読んだか失念してしまうのでした。
たまにはメモっておこう……。
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2014年11月17日

『テイルチェイサーの歌』タッド・ウィリアムズ

『テイルチェイサーの歌』
タッド・ウィリアムズ:著
平野 ふみ子、 平野 英里 :翻訳

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はじめは、猫を主人公にした単なるboy meets girlのお話かと
思って手に取った。
それでもよかったのだ。
SFで言えば、猫が出てくるというだけで、それまでハインライン作品は
読んだことがなかったにも関わらず、『夏への扉』を手に取ったこともあるし。
でも、それだけじゃあなかった。
ビバ!

作品の序盤後半から、大きく物語は進展する。
そして、中盤でまさかあのようなモノが存在して、それを
あの方が現れ出でて、どうにかしちゃうなんて……!
タッド・ウィリアムズ、よくわかっているじゃありませんか。
これ、ちゃんとファンタジーしてるよなあ。
そしてちゃんと恋愛話にもなっているのでした。
きちんと伏線を回収してくれて、実にスッキリ。
ところで、一読してみた結果、わたくし的には
ポップ卿とスナップ卿がお気に入りでござる。

新しく作家を知るのは、怖いものみたさ半分・楽しみ半分な
ところがあるんだけれど、タッド・ウィリアムズに関しては
大正解だったな。
別の作品もぜひ読んでみようっと。

妻が、
『The Dragonbone Chair』も
読んだことがあると教えてくれたので、タッド・ウィリアムズの
他作品も気になっているのよね。
ハヤカワで邦訳が出ているから、どれ、買ってみるか……。


本を読むとき、頭の中で作品世界が絵になってよく動きだすだけど、
本作品のパンスクイックくんに関しては
北道正幸さんが『プ〜ねこ』で描くところの仔猫の姿で想像していました。
カワユイ。
ああ、楽しかった。


はじめて読む作家の作品への取っ掛かりとしては、
「猫が出てくる」という、この一語をキーワードにするのは
案外よいことなのかもしれない。
少なくとも、猫好きを自称する自分にとっては。

前述のハインライン、はじまりは『夏への扉』だったが
その後さまざまな作品を読んだが、そのほぼすべてが当たりだったのを思い出す。
(自分の趣味嗜好に合致した作品が多かったからでもある。)









テイルチェイサーの歌 (ハヤカワ文庫FT)  Amazon.co.jp
タッド ウィリアムズ:著
平野 ふみ子、 平野 英里 :翻訳
http://www.amazon.co.jp/dp/415020134X



夏への扉 (ハヤカワ文庫SF) Amazon.co.jp
ロバート・A. ハインライン (著), 福島 正実 (翻訳)
http://www.amazon.co.jp/dp/415011742X


プ〜ねこ(5) (アフタヌーンKC) コミック
北道 正幸 :著
Amazon.co.jp
http://www.amazon.co.jp/dp/4063879461/

タグ:FT
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2014年11月03日

スィールの娘 (マビノギオン物語2)

スィールの娘 (マビノギオン物語2)
エヴァンジェリン・ウォルトン(著)
田村美佐子(翻訳)

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『スィールの娘』、読み始めるまでは時間が掛かったのですが、
いざ手に取って読み始めてからは、読み終えるまであっという間でした。
マビノギオン物語1で感じていた、手が届きそうでいて届かない、
もやもやとした、漠たる印象はそこには無く、
人物の造形や風景といったビジュアルのイメージが
眼裏にしっかりと描き出すことができたのが印象的な作品でした。

特に、アイルランドにおいて耐えるブランウェンの姿と
アイルランドから帰ってくるときのブランのあの姿が
強烈な「絵」として迫ってくるものがある、この『スィールの娘』。
遠い昔、このブランの姿はどこかで読んだことがあるような
気がしないでもない……。
どこかでマビノギに関する一節でも読んだことがあるのかしら、わたくし。

マビノギオン物語1を、いまひとつ踏み込んで読めなかったせいで
上記のような読後感を抱えてしまったのは、
本のせいではなくおそらく自分の読書への姿勢のせいなのだと
思います。その時の。
ご、ごめんなさい。
後々再読したら、きっと印象は変わるのではないかと思います……。

マビノギオン物語は、以下続刊。
これ以降も楽しみにしております。


翻訳の田村美佐子さんは、
(わたくしの中で)掛け値なしに賞賛したいファンタジーの中のひとつ、
『マットの魔法の腕輪 』(ニーナ・キリキ・ホフマン)を翻訳されてもいます。
更には、DWJの名作・デイルマーク王国史のうち二冊をも翻訳されているのよね。
田村さんもわたくし好みの翻訳をものされる方のおひとり。
(ああ、『マットの魔法の腕輪』は、ぜひ万人に手に取ってほしい。
一読して幸せな気持ちにひたって欲しい作品です。
どうしてこんな名作が世に広まらないのか……。)





『スィールの娘』
東京創元社の紹介ページ
http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488579043

『スィールの娘』
Amazon.co.jpの紹介ページ
http://www.amazon.co.jp/dp/4488579043


マットの魔法の腕輪   東京創元社
http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488594015
タグ:FT
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2014年05月31日

東京創元社、6月の新刊ッ!

おお。
来た、来たぞ!
東京創元社から新刊お知らせのメールマガジンが来たぞ。
来月はファンタジーが豊作ですね。
お小遣いが足りるかしらん(心臓バクバク)……。
6/12には、

  『スィールの娘 マビノギオン物語2』
  エヴァンジェリン・ウォルトン/田村美佐子訳
  (創元推理文庫/海外ファンタジイ)/税込定価 1,080円

がっ。
前回の『マビノギオン物語1』も面白かったから、これは
外せないだんべえ。
そして、6/21日刊の2作品が素晴らしい。

  『アーデン城の宝物』E・ネズビット/井辻朱美/永島憲江訳
  (四六判上製)/税込定価 2,592円

  『タイタス・アウェイクス ゴーメンガースト IV』
  マーヴィン・ピーク/メーヴ・ギルモア/井辻朱美訳
  (創元推理文庫/海外ファンタジイ)/税込定価1,728円


ふおおおおお。
ネズビットは外せないべえ!(汗をかいた拳を握りしめつつ。)
しかも井辻先生訳。

うわーん、しかもゴーメンガーストの続きが出るよう。
浅羽さん亡き今、やはり訳者としては森下弓子先生か井辻先生かと
思っていたからのう。
井辻先生ということで安心して読めそう。
ゴーメンガースト大好きなのよねえ。

個人的に思うのですが、森下先生はすっと心に染み入るような
素直な翻訳で好き。読みやすいのです。
そしてそして井辻先生は、変幻自在、千変万化と言いましょうか、
その作者、その作風に実に忠実に翻訳されて、作品の美点を
ダイレクトに伝えてくれるように思えて、好きなのですよねえ。
それが、「すべてを浅羽色に染め上げる」ステキ翻訳の浅羽さんの
あとを受けてゴーメンガーストを訳されるというから、
その対比が楽しみです。
マーヴィン・ピークと奥さんとの文章の対比とも合わせて楽しめるかな、と
思う次第です。


posted by よねっち at 17:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 読む。

2014年05月25日

『カストロの尼』 スタンダール

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スタンダールの『カストロの尼』。

実家の書庫からこのGWで帰省した折に持ち帰ってきた、『カストロの尼』。
はるか昔、20数年前に荒川区の駅前書店で買い求めたものだった気がする……。
一度は読んだもののはずだが、よい具合にストーリーを失念しているので
初めて読む本のように思えたのでラッキー。

うーん。
昔はこれが悲恋だったのよね?
確かにラストのエーレナが自刃する場面の描き方は
鮮烈に映像に残るし、よい場面やキャラクター造形も楽しいって
思えるところがあるにはあるんだけれど(あの罵倒される司教が
次第に公衆の面前でにやにやしだすところとかさ。)、
全体的に思うのは、「みんな、バカばっかだなー」という点か……。
こんな風に乱暴に断じてしまっては、古典を楽しむことの意味が
薄くなってしまうのはわかっているけれど、
だってだってなんだもん。

あ、あれ?
ところでジュリオは?
おや?


Amazon.co.jp
カストロの尼―他二篇 (岩波文庫 赤 526-7)
http://www.amazon.co.jp/dp/4003252675





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2014年04月27日

『八日目の蝉』角田光代

先日、『騎馬の公子』ほか、ピーター・モーウッドの
歳月の書シリーズを読み、己をアルドリック・タルヴァリンであると
錯覚するほどにお熱になってしまったので(※冗談ですよ?)、
他のファンタジー作品を手に取る前に、ジャンルが異なる作品を読んで
ワンクッションを置くことにしました。

2014_04_27_15_21_34.jpg
そこで手にしたのは『八日目の蝉』(角田光代 著)。
角田さんといえば、新幹線で山形へ帰省する折々に
その車内雑誌『トランヴェール』に掲載されていた
エッセイで目にしていた名だ。
「ああ、いいエッセイを書く人だ」と思いながら
ページを繰った覚えがある。
しかし、刊行された書籍はいまだ手にしたことがなかった。

中公で受賞した作品であるという前知識は、どこかで読んだことがあり
知っていたが、読むのは初めてとなる『八日目の蝉』。

正直に言えば、そのあらすじを読んだ段階で
それ以上読むのを躊躇ってしまった。
設定からして読めば必ず痛みを感じる作品だと察せられたので。
だが、読んだ。
あらすじだけ読んで知ったふうに思うのも失礼だと思い直したのも
あるし、あらすじから受けた印象だけで終始する話でも
なかろうという期待を込めて、ページを繰った。

えーっ、そこでそう選択する?
なぜそんな行動を……。
ああっ、こんないい人が協力を……。
お、うまい作品の組み立て方。
あのオッサンがまたここで登場か。ぶふふ……。
とか、いろんな思いを抱きつつ、読みました。

ふわあ、あらすじだけで読んだ気にならないで良かった。
読んで良かった。

出てくる男どもは、みな馬鹿者だけれども、
女たちはそれぞれに強く生きている。
(流されて、強くはあれない女性たちもいたけれども。)

そうねえ、面白かったけれども、
心に余裕があるときでないと、人によってはダメージを受ける作品かも
知れないですねえ。

1章は、「どうか逃げ切って」と声援を送らずにはいられなくなるのが
不思議だ……。
秋山夫妻の迂闊さのために、あそこ(0章)で希和子が薫を
攫わなければ、どうなっていたか分かったものではない……と思わせる
書き方をしているからかなあ。


角田光代 Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A7%92%E7%94%B0%E5%85%89%E4%BB%A3



えきねっと トランヴェール
http://www.jreast.co.jp/tabidoki/trainvert/




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2014年04月20日

『騎馬の公子』他 ピーター・モーウッド

騎馬の公子―歳月の書
悪鬼の侯子―歳月の書
火竜の高師―歳月の書
(創元推理文庫)

ピーター・モーウッド (著)
佐藤 龍雄 (訳)


IMG_20140417_214144.jpg


あああ、面白かった!
文句なし。
(細かに部分を突っ込むと、あれやこれや言いたい点はあるんですが、
まあ、通して読んだ結果、「文句なし」としてもいいかなと。)
いや、女性に弱い部分がアイタタな面が玉にきずだったりしても、
主人公・アルドリックの人間造形は、いいね。
格好良すぎるといえば良すぎますが、まあ、その分
悲しみを背負ってもいるわけで、それは許してあげてください。
しかし、強いわ、若いわ(?)、格好いいわ、モテまくりだわ、
助かりまくりだわ、アルドリックってばなんていいキャラなんだ。
ずるーい。おまけにお金持ちでもあったっけな。
ふう……。
こりゃ、中高生の男の子たちが読んだら燃えまくり(萌えまくり?)な
作品よね。
アルバの世界がちょっと日本っぽい世界観もあったりするしな。うむ。

数年前に高田馬場の古本屋で偶然1巻と3巻だけ見つけて即購入し、
「2巻が見つかるまで読まないで”積ん読”しとこ〜っと」と
軽い気持ちでずっと放置していたジブンを叱りたい。
ああ、もっと早くに読んでいればよかったー。

読後、もう、なんていいましょーか、
気分はアルドリック・タルヴァリンですよ!(意味不明)
ナリキリですよ!くわっ(目を見開きつつ)。
とかいいつつ、実はデワン萌えだったりするワタクシ。
ちょっとしか出ていないマレヴナも最後のシーンでくらっときましたが。ええ。


こりゃ勢いでAmazon.comにて
The Warlord's Domain Book (The Book of Years, No 4)でも
ゲットしちゃうかのう。
迷うのう。



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2014年03月24日

『死霊の都』タニス・リー

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死霊の都
タニス・リー (著), 森下 弓子 (翻訳)


読まず嫌いでしたが、タニス・リーって面白いんだねえ。
手近に読む本が無くなってしまい、Amazonで注文していた
ビジョルドの『外交特例』が届くまでのつなぎにと
読んだのが、タニス・リーの『死霊の都』。
わーお。
頁を繰る指が止まらない。
主人公も謎があるようでいて、性格は明朗。いいね。

謎が謎を呼ぶ前半は、マキリップの『ムーン・フラッシュ』を思い出しました。
後半、『タイタス・アローン』にも似通うものを感じてしまうのはなぜかしら。
まったく異なる作品だというのに。
(共通するキー・ワードが無いわけではないけれどね。うむ。)
前半後半でがらっとお話が変わる点は、ハインラインの『銀河市民』をも思い出しました。まる。
(最近になって、『銀河市民』の表紙が様変わりしていて驚きました……。)

先週気になったので手持ちのハヤカワFT文庫を調べてみたら、
執筆している作家にやや偏りはあるものの、古典を中心にほどよい具合に
購入しているのがわかりました。
もうちょっと買うべ。


死霊の都
タニス・リー (著), 森下 弓子 (翻訳)
Amazon.co.jp
http://www.amazon.co.jp/dp/4150200505/



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2014年03月12日

『性分でんねん 』(ちくま文庫) 田辺 聖子

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『性分でんねん 』(ちくま文庫) 田辺 聖子 (著)


あっという間に弥生月。
おお、今年も四分の一が過ぎてしまふ・・・・・・。
街で卒業式に向かうのであろう振り袖姿の
お嬢さんたちなぞ見かけると、あれもうそんな季節だったかしらと
ワタクシ驚いております。あわわわわ。

今年に入ってから、別になにも本を読んでいなかったわけでは
ないんです。ええ。

年明けより、田辺聖子さんのエッセイ『性分でんねん』を読みました。
田辺さんといえば、中学生の時分に『源氏物語』の田辺訳や
『王朝懶夢譚』は読んでいましたが、エッセイを読むのは初めて。

はてどんなものだろうと読み進めるとスラスラ読める。
(まあ、エッセイですからね。肩の力を抜いて気軽に読めるのがイイ。)

書かれたのは今から三十年ほど前であるにも関わらず、
今でも通じる話題が散見されるのが面白い。
男女の仲や食べ物の話題などは、得てしてそういうものかも
しれませんね。

わたくしには無い視点で語られる内容ばかりなのが
今回楽しく読めた理由かもしれません。
田辺さんはエッセイもいいんですねえ。



性分でんねん (ちくま文庫) Amazon.co.jp
http://www.amazon.co.jp/dp/4480027408



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2013年12月31日

ロイス・マクマスター・ビジョルド『影の王国』

影の王国

ロイス・マクマスター・ビジョルド :著
鍛治 靖子:訳




ビジョルドは、息子と父親との関係を描くことを
好もしいと思っているのだろうか。
ビジョルド作品で「息子と父」と言えば『ヴォルコシガン・サガ』が有名。
本作はそれほど色濃く息子と父親との関係を全面に打ち出しては
いないものの、主人公の精神の成り立ちを考えるとき、父親との関係を重要視すべきだろう。

前二作の『五神教シリーズ』とは異なる世界で展開される本作。
読み進めるうちに、どうしても表紙絵の主人公男女二人の絵が
本文から受け取るイメージと異なるので参ってしまった。
そこで、表紙絵を無視して読み進めた。

おかげで、ぼくの頭のなかでは、主人公は『五神教シリーズ』第一作の
カザリルの姿で活躍した。
(すみません、すみません。)

「ビジョルドの訳者」と言えば『ヴォルコシガン・サガ』シリーズを翻訳されている
小木曾さんが有名だし、好もしく思っているが、『五神教シリーズ』を訳しておられる
鍛冶さん(梶元さん)の訳もまた大変好もしいと思っている。

ビジョルド作品にはじめて触れたのは、ビジョルド初のファンタジー作品である
『スピリット・リング』。
そこからSF作品である『ヴォルコシガン・サガ』を読み、ファンタジー作品
である『五神教シリーズ』を手にした。

ビジョルドはキャラクター造形も見事であれば世界観の形成も上手。
ストーリーの構成も巧み。そのすべてが好もしい。


影の王国 上 (創元推理文庫) [文庫] Amazon.co.jp
http://www.amazon.co.jp/dp/4488587062/



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2013年05月05日

『石の夢』ティム・パワーズ

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『石の夢』ティム・パワーズ
     浅井修=訳


ティム・パワーズの『石の夢』(The Stress of Her Regard)を読みました。
あらすじを読んで購入を決めたのですが、ふふふ、
僕はどうしても吸血鬼モノに惹かれるようですね……。

バイロン卿が格好いいのよう。
ダメなときもあるけれど、そのダメさ加減も含めて格好いい。
バイロン卿が活躍する場面になるたび、ハートがきゅんきゅんしながら読んでいました。
ふへへ。


着想も良いのですが、作者が各場面を表現するときの
ビジュアル的な良さといったら、抜群ですよ。
文章が頭の中でムービーになって勝手に再生されはじめました。
ティム・パワーズは、実に映像に適した場面構成が上手な方。
もちろんお話の構成も上手でしたよ。
上下二巻の構成ですが、ページを繰る手が止まらず、あっという間に
読み終えてしまって、「ああ、もったいない、もったいない。もっとゆっくり読めば
よかった」と思いましたもの。



ぼくは、浅井修さんの訳は、この作品ではじめて読んだのかな?
浅井修さんの訳は、癖がなくてすらすらと読めるタイプの訳でした。
上手な訳の、ひとつの良い例ですよね。





中学生くらいのときに購入したバイロン詩集が手元にありましたので、
『石の夢』とともに、パチリと撮影。

タグ:FT
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『惡の華』 押見修造

『惡の華』 押見修造


最近アニメ化されて話題になっているという、『惡の華』を読みました。
とりあえず、1〜4巻まで。
流行りの物事に疎くてスミマセン。
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一読して思うのは、主要な登場人物らが、
器用に生きられない姿が見ていてムズムズするなぁ、
自分ならもっとうまく生きられるのに……という思い。
これは登場人物たちと同じ年齢で物を考えることが
できなくなった自分だから思うことなのかしらん。

読み進めるうち、いたたまれない気分になるのは
アンチヒロインとも言うべき少女らの言動。
読んでいて、辛い。
不器用な生き方しかできないのが歯がゆく、切ないのよね。
痛いなあ、必死じゃのう。

作者や、作品を支持する読者たちは
このムズムズ感を求めて作品を発表し、読み続けているのかねえ?
どうだろうねえ。


桐生市(ですよね?)のあちらこちらの風景が背景に挿入されているのが、おもちょい。
桐生から山を越えてどこかに行こうと思ったら、きっと
みどり市か佐野か、太田になるよなあ……と、お話の本筋とは無関係のところで
ぼんやりと考えたワタクシであった。まる。
(そういう意味で「山の向こうへ」って作中で言っていたワケでないのは重々承知の助。)

連載当初の絵柄が、3巻で『ライジングインパクト』時代の
鈴木央さんっぽい絵になっている?
連載当初の絵も、このタッチが変化してからの絵柄も好みです。

どれ、続きを購入してみようかしらん。



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2013年03月06日

『ガラスびんの中のお話』ベアトリ・ベック

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ガラスびんの中のお話 ベアトリ・ベック:著
川口恵子:訳


ベアトリ・ベックの『ガラスびんの中のお話』を読みました。

オチの無い不気味な小話だったり、
ぴりりと風刺が効いた小話だったり、幾つもの作品を
楽しむことができました。
これは音読してちいさなひとに読み聞かせると
面白いかもしれません。

理不尽で、切なくなるような話も混じっていますが、
それもまた良いのでしょう。

ぐっと引き込まれるというものではないけれど、
たまに思い出したように書架から取り出して
パラパラと気に入ったお話を読むには、良い本なのではないかしら。
でも、この手合いの作品が好きな人には
とことん気に入られるタイプの作品だろうな、という気もします。
奥付を見ると、1980年発行で、手元にあるこの本が2002年の第六刷ですから
地味にじわじわと重版しているところからも、
ある一定のファンがいるようにも思えます。

しかし、カバー/口絵/挿絵の飯野和好さんの絵が
個人的にダメだった……。
とても苦手なのよねえ。
ごめんなさいねえ。
生理的に受け付けない絵って幾つかあるんですよ。ごめんなさい。
ううう。
お話と、川口さんの訳は好みだったのにな〜。


訳者あとがきによると、作者のベアトリ・ベックは
苦労の末、父の友人だったジッドの秘書になって
生活が安定したとのこと。

久しぶりに、ジッドの『狭き門』やら『田園交響楽』やら読んでみるかな。
読むと鬱屈した気持ちになる作品ではありますが……。
そう、暗澹たる思いに、胸塞がるのよね……。
ちょっと思い出しただけで震えが。
あわわわ。


Beatrix Beck (en.Wikipedia)
http://en.wikipedia.org/wiki/B%C3%A9atrix_Beck




タグ:FT
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2013年03月05日

『ベアゲルター』沙村広明

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うほっ。
他の沙村作品のどこかで見かけたような外見のキャラクターが沢山・・・・・・。


『ベアゲルター』 沙村広明


沙村作品は、『おひっこし』や『ハルシオン・ランチ』のようなお笑い群像モノが
良く出来ているなァと思って読んでいますが、
そういえば先日購入した『ブラッドハーレーの馬車』は
一読して悲しくなる作品であった。
画面から痛みを感じてしまう作品には、ほんとう、
弱いんですよ・・・・・。
心をえぐられる思いがする。
沙村さんはそういうのを狙って描いているんでしょうケド。

そしてこの『ベアゲルター』。
エログロです。
そしてお馬鹿です。

ああ、この作品も画面から痛みが伝わってきて
読んでいて辛いんだけれど止まらない。
一読して「早く続きを。早く、早くぅ」となったからなあ、わたくし。
『ブラッドハーレーの馬車』はひたすら虐げられる少女たちの
話だったから、再読する勇気がないままに書架に並べてしまったけれど、
『ベアゲルター』なら何度も再読できる。イケる。
強い女性が出てくる話がすっきなのよねー。
(おバカな男性キャラクターも好きです。好きです。大好きです。)

あ、そういえば『無限の住人』てばいつの間にか
完結していたんですってね。
うーん、うーん、いまさらだけれどはじめから購入して再読すべきか
悩むわあ。



posted by よねっち at 22:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 読む。

2013年03月04日

『あの娘は都市伝説。』御免なさい

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『あの娘は都市伝説。』御免なさい



我が家にも、残虐さんがやって来た!
ようやく、ようやくやって来たよ・・・・・。


残虐さんの、こう、なんていいましょうか、
突き抜けたトコロがえらくお気に入りで御座います。
冷静に世のお兄ちゃんたちをニッコリ笑顔で滅するあたりが、得も言われぬ可愛らしさ(?)。

成人向けの本ですが、残虐さんを知るには良いキッカケになる一冊なのでは
ないでしょうか。
御免なさいさん渾身の一冊です。


平行奇塊学論(へいこうきかいがくろん)
http://parallelism.blog45.fc2.com/

漫画家「御免なさい」さんの公式サイトです。
残虐さんたちに会えるよー。
posted by よねっち at 21:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 読む。

2013年02月17日

『河童が覗いたニッポン』妹尾河童

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「気軽に読んだ」繋がりで、
妹尾河童さんの『河童が覗いたニッポン』を挙げておきましょう。
今週後半はこの本を手に電車に揺られていましたが、
カッパさんの本を手にとったのはこれが初めてなんじゃないかしら。

手書きの文字と絵で構成された紙面。
字も読みやすくて気持ちいいわあ。
こう、なんていうのか、ちまちまと描かれた
図解っぽい絵って好きなのよねえ。

多くの人ならあまり興味を持たずに見過ごしてしまうような
話に、がっつりと食らいついていく河童さんの
姿勢が楽しい。
僕も多くの一般人のなかのひとりなので、河童さんの視点に
「ほう!」と驚かされるばかり。
おもちょい。

本作は平成七年時点の二十二刷で、初版は昭和五十九年発行。
そのために扱っている話題も、いまでは昔の物語状態な
ものが多かったりしますが、「ふだん気にしたこともなかった事柄」
「自分では気づかなかった事柄」を紹介してくれる本書は
時代が移り変わっても、「読みたい」と思える魅力に溢れています。

図書館や、ご家族の書架に本書があれば、ぜひパラパラと頁をめくり、
気に入った項目だけでも幾つか読んでみていただければ、
ぼくが感じたワクワクして本書の頁を繰った気持ちが
読み手の方に届くのではないかしら。



posted by よねっち at 21:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 読む。

『荒俣宏の世界ミステリー遺産』荒俣宏

たまには、肩の力を抜いて、気軽に読める読み物も良いでしょう。

というわけで、先週から今週はじめにかけて通勤電車内で読んでいたのは
荒俣宏の『荒俣宏の世界ミステリー遺産』(祥伝社黄金文庫)。

眉唾な話から、ちょっとしたホラーちっくなミステリーまで、
気軽にオカルトの世界に首を突っ込んだ気になんとなく浸れるように
思える(ええい、回りくどいな、僕ってば。)読み物だ。
アラマタ作品を読むのは、フィオナ・マクラウドの『ケルト民話集』以来。

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一読いただければわかるとおり、ミステリーやオカルト世界の
ちょっとした紹介本。
これをきっかけとして、同じテーマで本格的にどっぷりとオカルトの
世界に首まで浸かるのも面白いけれど、本書は「とくにオカルトに興味を持ってはいない」
一般の読者に向けて、ミステリーやオカルト世界を気軽に楽しんでもらおうと
様々な事柄を紹介する内容になっている……ような気がするんですが
実際のところはどうなんでしょうか。うーん。
ところで表紙にあるレーニンのミイラが怖いよママン。
子供の頃に、鉄門海上人の即身仏に何度か接したときは
こんなに怖い気持ちは抱かなかったのにのう。不思議じゃ。
(そういや、鉄門海上人が主人公の短編小説をむかし読んだような気が……。)

注連寺 鉄門海上人
http://www2.plala.or.jp/sansuirijuku/churenji/tetsumonkai/index.html


アラマタさんが溜め込んだ知識を、ちらっとこうした本で
紹介してくれるのも好きなんですが、やはりアラマタさんと言えば
翻訳各種や『帝都物語』のほうが個人的には好きです。
好きです。心から好きです。
わーい。

僕は、つくづく、SFっ子/FTっ子だよなあ。



posted by よねっち at 21:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 読む。

2013年02月09日

『チップス先生さようなら』

『チップス先生さようなら』
ヒルトン (著), 菊池 重三郎 (翻訳)


あれ?
そういえば今まで『チップス先生さようなら』を
読んだこと、なかったんじゃない?
……というわけで一読してみました。

はるかな昔、中学生くらいの頃にNHK教育テレビあたりで
映画版の『チップス先生さようならを』放映したことがあって、
途中から観たことがあるような気がするんだけど、記憶違いかなあ。
なんとなく覚えがあるのだけれど。
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さてさて。

うーん。
序盤、悲しい話題のせいで、これを家族に勧めるのに
ためらいが。ううう。
いきなりハードルが高いな、『チップス先生〜』ってば。

でも全体で見れば、まぁ、
「チップス先生、なんていいひと」
「教師の鏡ね」「生徒たちとの関わり合い方は、かくあるべきよ」
という内容だと思うのですが、なぜかあまり身を入れて読めなかったのよね……。
すみません、すみません。
訳がぼくに合わなかったのか、作品自体が合わなかったのか。
英國や米國で当時話題になった作品なのだから、良いものでは
あるはずよね。
原書で読めばよいのかのう。

『クオレ』を読んだときのように、心が躍らないのは何故だ……。
チップス先生の視点でばかり物事が語られるからなのかのう?
こどもたちの活躍がないからかね?

さらっと読んで、「いい話だ」と思ったけれど、
心が揺さぶられることは無かった……。
いつか読み返してみたら、また違った感想になるだろうか。

ところで、この本は全訳なのかしら。

posted by よねっち at 17:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 読む。

2012年12月02日

Wings2012年12月号特別付録『まるごと!天下一!!』

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Wings2012年12月号の特別付録に、『天下一!!』の永久保存版小冊子がつくというのを
作者の碧也さんのブログで知り、あわててAmazonで購入しました。

わたくしはコミックス派なものですから、この情報をあとから知って
あやうく涙をながすところでしたよ。
ふー、回避できてよかった!
『天下一!!』大好きですから、こうした機会を逃したくはないですもの。
ねー。

『天下一!!』5巻も届いたので、これから併せて読みますよ。(熱い鼻息)

タグ:漫画
posted by よねっち at 13:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 読む。

2012年11月06日

『ずっとお城で暮らしてる』シャーリィ・ジャクスン

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予備知識無しに、手にとった本だ。
タイトルだけは耳にしていたし、ぱっと見て表紙が気に入ったので。
この購入は、いわゆる表紙買いのうちに入るだろう。

はじめはファンタジーかと思って手に取ったのだ。
ところがどっこい、ホラーでしたのことよ。
いや、広義ではこれもファンタジーなのか……。

中学生の女の子が妄想しているような、ごっこ遊びが
随分と長く展開しているなぁ、という印象を強くもった序盤。
中盤、従兄弟を家に招き入れてしまってからの怒涛の展開は
先が読めるような空気を全体に漂わせつつ、しかし、
話の流れは、予想のやや斜め上を行く。
やや古い作品なのに、時代を感じさせないねえ。
終盤に至る過程で起こるあの出来事は、
『ジェーン・エア』のラストを思い出してしまって、
ぞわぞわと鳥肌が立ちましたよ、ええ。

メリキャットとコニー姉さん……。
コニー姉さんはメリキャットの望むままに小さな世界に閉じこもるのか。
現実をすべて受け入れるのは難しいから、自分が影響力を持てる
ぎりぎりの小さな世界で、恐るべきメリキャットとともに
隠れすむのか……。
すべてが語られてはいないのではないか。
どこからが現実で、どこまでが夢まぼろしなのかが分からない。
深読みも何もせず、綴られた文章そのままの意味を
受け取ったとしても、展開と登場人物の心情が理解できなくてホラー。

ホラーなのに、舞台劇のようにおかしい合唱がページの向こうから
聞こえてくるように思われてならず、ついにやりと苦笑してしまう。
そんな気持ちにさせられる、この作者の筆力が不気味。
不気味なんだ。
「メリキャット、お茶でもいかがとコニー姉さん」……とね。

メリキャットの気持ちに気づいていたコニー姉さんが、あらかじめ
分かっていた上であの出来事を受け入れたのか、
それとも現実を受け入れた上で、残された最良と思われる選択肢をコニー姉さんは
選んだのか、謎だ。いや、それならなぜあの従兄弟を招きいれた?
コニー姉さんがメリキャットにそれとなく示唆しての、あの結果なのか。
すべてはコニー姉さんの企みなのか。
いやいや、それも正解には思えない。

なにが本当のことなのか、なにが現実に起きた出来事なのか、
読んでいるうちにわからなくなったのは、作者に手玉に取られているのかしら。

もう何度か読み込んでみるか、読解力を持たなければ、
この作品の真の怖さや、姉妹の心情といったものは理解し得ないのだろうか。
うーん、理解はしなくてもいいかな。
さらっと読めるのだけれど、読後、わけが分からず、
そのことが「怖い、不気味だ」と感じた気持ちを倍にもしているのかしらん。


あ、コニー姉さん(コンスタンス)が作るお料理は、どれも美味しそうで
よだれをじゅるじゅる流しながら読んだでござる。

ところで、コニー姉さんの名前である「コンスタンス」。
響きがよくて、好きな名前だ。

-------------------
ちょっと解説が鬱陶しい。
自分語りが多くて。
作者と作品に関する解説だけを読みたかったのだが。
この解説はいらないなあ。


ずっとお城で暮らしてる
シャーリィ・ジャクスン 著
市田泉 訳
http://www.amazon.co.jp/dp/4488583024/


タグ:FT
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2012年07月28日

『すすきの有影灯』『酒場稼業四〇年 薄野まで』八柳鐵郎

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一見して華美に見える、表面だけを面白おかしく記した浅薄な内容をした
いわゆる有名人が記した書籍というものが元来好きではない。
ぼくが好むエッセイは、真実こころからの独白などが記された、
その人しか知り得ないような、語り得ないような内容のもの。
そうした作品をこそ貴重なものとして、ぼくが大切に思うひとたちに
「手にとってほしい」と願う。

はじめ八柳さんの本を購入しようと思った動機は
「色艶のある話が読めるのではないか」と、その著作の
タイトルや簡単な紹介文から想像した、やや下卑た思いが若干混じっていた。
一読してそれを恥じた。

そうした話が無くはないけれど、それに終始しているわけではなく、
色艶ある話が取り上げられていても、主題は別のところにある。
話の根底には八柳さんの温かな人柄と、夜を生きる幾多の男女が
辿った人生の悲喜こもごもを見てきた人生の厚みがあった。

薄っぺらい内容ではなかった。
八柳鐵郎さんによって語られるのは、八柳さんだからこそ記し得た話だ。

夜の世界に生きる人は数多くいるだろう。
だが、そのうちの何人が八柳さんと同じ立場にたったとき、
同じように涙することができただろうか。
たとえ八柳さんと同じ状況の人がいたとしても、
八柳さんに心情を吐露してきた人たちが、
その他の誰かに対して、八柳さんに対するのと同じように心を
開いてくるかといえば、それは無いだろう。

ぼくだったら?
ぼくは、辛い話や状況、痛い話は怖いし嫌いだ。
同じ立場にぼくが立っていたとしても、
恐らくその場から逃げ出してしまっていたに違いない。

悲しい話、おかしい話、喜ばしい話、怖い話……。
さまざまな話が幾つも取り上げられている本だ。
自分の知らない世界のことは、あまり興味が無いわ、という
むきも多いかもしれないけれど、そうした方にも、
ぜひ八柳さんの本を勧めてみたいものだ。




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2012年07月08日

たまりば しおやてるこ

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森薫さんのおまけ「SCRIBBLES」目当てで、普段は購入しない『Fellows!』を購入し、
パラパラと眺めていたら、ぐっと心に迫る作品が。
おお、おおお?!
しかもその回が最終回でした。
その作品が、しおやてるこさんの『たまりば』。
しおやさんの作品を読むのは初めてだけれど、気に入った。
これは買うしかないであろう。(ごくり)

というわけで、『たまりば』1巻と2巻を購入しました。
これを読んだら、「ああっ、ぼくもこんな恋愛がしたいっ」と
ムズムズする男子が多いのではなかろーか。
(MNO団のようにな。)

ヒロインの美和パイが、ひたぶるにハルオ(主人公)に向かう姿勢が
甘酸っぱくて好もしいのですよ。
これ、男性側としては読んで楽しいけれど、女性側としては
どう受け取る作品なんだろう。
作者は女性ですが。
気になります。

ぱっと、こう、明るい朗らかな読後感で
良い気持ちになる作品ですね。
全編をとおして。最近はこういう作品に触れる機会がなかったので、
個人的には、この出会いは貴重です。


今年前半に読んだ漫画のなかでは、一番の朗らかさ。
『たまりば』、お勧めします。


 SCRIBBLES
 http://www.enterbrain.co.jp/fellows/scribbles.html
タグ:漫画
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2012年05月20日

『麦屋町昼下がり』 藤沢周平

ヒースロー空港からブリストルへ向けてNational Expressのバスで西へ向かうとき、
藤沢周平の文庫本『麦屋町昼下がり』のページを繰った。

英國に在って日本の香りを忘れぬように、とあえて
持って行った本だったが、わずか数ページで読むのをやめた。
車の中で本を読むと酔ってしまうのも理由のひとつだったが、
車窓を流れるなだらかな丘、菜の花と思われる黄色と緑色、
時折見かける英國の民家を目にするうち、その気分ではなくなっていたからだ。
日本を思い出すよすがとして藤沢周平を手に取るのもよいが、
せっかく渡英したのだから、しばらくは藤沢周平が描く
侍の世界から離れて本を閉じるのも良いだろうと思えた。

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帰国してから二週間。
浮かれていた心もようやく落ち着きを取り戻した先週、
あらためて『麦屋町昼下がり』を手に取る。

何度目の読み返しになるか忘れたが、いつ読んでも変わらずにいい。
堅苦しいだけの時代小説ではなく、作品世界に実際に登場人物たちが
生きているように思えるのびのびしたところがまたいいね。
この時期の藤沢周平ならでは、だろうか。
藤沢周平の、ある時期の町人物は読後鬱屈とした気持ちに
させられる短編も多く、再読するにあたっては
「えい」とこちらも気合を入れて読み進めないと
負けて鬱な気持ちになりかねない作品もある、と思っているのだが、
『麦屋町昼下がり』に限ってはそれはない。
痛快。

とくに気持ちが良いのは、登場する女性たちのさり気ない
言動に、一瞬で「なんと可愛らしい」と恋にも似た感情を
抱かされてしまう点だろうか。
上手ですよ、藤沢周平。

タグ:藤沢周平
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2012年04月19日

水の女 From the Deep Waters

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久しぶりにみたよ。
ラファエル前派の画家たちが描く乙女たちが美しい……。

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2012年03月31日

『百姓貴族2』と『銀の匙2』荒川弘

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『百姓貴族2』と『銀の匙2』荒川弘


来月半ばには『銀の匙』3巻が発売されますが、
少し前に『百姓貴族2』が発売されていたので
『銀の匙2』と合わせ読んだ感想をば。

お話が進むにつれて各キャラクターの内面が
より深く描き出されてきた『銀の匙2』。
1巻を読んだときには、「面白いほうに転がるのか、
そうではないのか、
まだなんとも言えない。エッセイで同じようなネタを扱っている
『百姓貴族』のほうが遥かにぶっとんでいて面白い」と
思ったのを、いま心の中で作者に謝ろう。
1巻から続けてきた、お話を広げるための準備がようやく
整いました、さあこれからはお楽しみタイムよ……って
作者が本のあちら側から高らかに笑い声をあげている姿を
想像しましたよ。
『銀の匙』はこの2巻に至って面白いってことがわかりました。
すみません、すみません。
続きの3巻が待ち遠しい。
そう、コミックス派で本誌連載を追いかけていないぼくですから。


『銀の匙』が面白みを増してきたのに比べて、『百姓貴族2』に
「裏切られたような、もやもやした思い」を抱いてしまうのは
なぜだろう。
思うに、読者アンケートを重視しすぎている編集サイドがちょっと鼻につくと
ぼくが感じたせいかもしれない。
父ちゃんネタが毎度繰り返しのように思えて食傷気味でもあるし……。
新鮮味が薄れていやしないか。
荒川家の父ちゃんが素晴らしいのはわかる、おもしろいのもわかる。
1巻で知った荒唐無稽っぷりを覚えているからね。
1巻読後はは手放しでブラボーを連発していたものですよ。

個人的には父ちゃんネタだけではなく荒川流の農業エッセイを読みたかったという
期待が大きすぎたから、前述のような「もやもや感」を抱いたのではなかろうか。






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