ダイアナ・ウィン・ジョーンズ :著
原島文世 :訳
妻の書架に、創元ブックランドから出ていたこの本の
単行本(ハードカバー)上下巻が並んでいた。
うつくしい表紙絵。
しかも著者はあのダイアナ・ウィン・ジョーンズ!
いいなぁ、いいなぁ、読みたいなぁと思い、妻からは
「読んでもいいよ」と借りる許可をもらってはいたのだけれど
大型のハードカバー本を通勤時に持ち歩いて読む自信が持てないままでいたのでした。
しかし、出たのですよ文庫版が。
文庫版の発売日が2011/4/21と記録にはあります。
単行本の発売日が2006/3/22ですから五年経ってようやくの文庫化。
文庫版が出た昨年、発売日のすぐあとにわくわくしながら一読。
「うわー、やっぱりジョーンズ、すげえ!」と感嘆。
文庫版の表紙絵はぼくが心惹かれたあのうつくしい単行本の表紙絵とは異なり
ジョーンズ作品の単行本表紙絵では常連の佐竹さん。
(佐竹さんの表紙絵、『ダークホルムの闇の君』や
『グリフィンの年』の単行本絵では味わい深くて好きだけれど
『バビロンまでは何マイル』に限って言えば、はじめに見た
あのうつくしい表紙絵のほうがこの世界観に合っているように
思えてしまう。きらきらした印象をこの作品から受けるから、
あのうつくしい表紙絵のほうを好もしいとぼくは思うのかしら。
いえ、佐竹さんの絵も素敵なのは変わらないはずですが、
はじめに見た単行本表紙絵のほうから、きらびやかで鮮烈な印象を
受けたせいですかねぇ。)
初めて読んでから少し時間が経過したいま、ほどよくその内容を忘れているのもあって
再読をしています。わくわく。楽しいなあ。
これは文庫版。
お話のなかで、世界のあちらこちらに広がった謎や小話の数々が
ぐるっと大きな輪を描いて回りだし、ページを繰って読み進める
ぼくの心もその輪のスピードに遅れまいと自然と弾みだしてきました。
ダイアナ・ウィン・ジョーンズの紡ぐお話が勢いよく走り出したら
その楽しさにご用心。ページを繰る手が止まりませんから。
最後まで一気に読み進めてしまうこと請け合います。
『バビロンまで何マイル』は、さながらラストまで
止まらないジェット・コースターのよう。
マリーを追いかけてルパートがブリストルじゅうを
駆け巡るのがさながらブリストル観光ツアーめいていておかしい。
あれ? え? いつの間に!?……と、ルパートの心が変化していくのを
追いかけるのがまた読んでいて楽しい!
くう〜っ、この楽しくってウキウキする気持ちを、みんなに分けてあげたい。
フンガー!
脇をかためる登場人物たちも、それぞれが強烈過ぎる個性の持ち主ぞろい。
さすがDWJ。
ジンカの「え、え、いいの?それで!?」と思わずにはいられない奔放さや
クワック夫妻の格好良さとか、もう、随所に小技が効いている。
勢いある本筋とは別に、思わずにやりとせずにはいられないエピソードが盛りだくさん。
ご本人も楽しみながら書いたのではないかしらん。
キースが魔法集団のそばで指揮棒を振り回すかのようにしてふざけているのが
ファンタジアのミッキーを連想してしまい、おかしい。ぷふーっ。
ニックが振り返っちゃダメな気がして振り返らずにきた場面は、
「あれ? 黄泉比良坂じゃなくって何だっけ?」とはじめ思ったのだけれど
きっとロトの妻とか、ほかの話のことよね。類似したお話は世界各地にあるものね。
それにしても、読み進めるうちにだんだんとマリーが
たまらなく可愛らしく思えてくるから不思議だ。
話の筋の奇抜さや組み合わせの面白さ、着想の非凡さだけではないのよ。
ジョーンズさんは心理描写も巧みなのですよ。
作品のそれぞれが異なる雰囲気を持っているのに、そのどれもが一級品。
まぁ、一番は「面白い!」って素直な感想を抱けるのが
ジョーンズ作品を人に勧めたくなる点かな。
ダイアナ・ウィン・ジョーンズさんが亡くなり、明日の3月26日で一年となります。
震災があった直後のことで、まだ日本中が動揺している最中のことでした。
ぼく自身、震災後のこの日本で明日どうなるかもわからない不安を強く感じていました。
いま振り返れば、ジョーンズさんの訃報に接したあと静かに哀悼の意を
表する間もなかったように思えてなりません。
official website of Diana Wynne Jones
http://www.leemac.freeserve.co.uk/
ブリストル大学内、DWJ名誉学位2006年授与のページ
http://www.bristol.ac.uk/pace/graduation/honorary-degrees/hondeg06/jones.html
telegraph.co.uk内、DWJの訃報を伝えるページ
http://www.telegraph.co.uk/news/obituaries/8414429/Diana-Wynne-Jones.html
Wikipedia(En) Diana Wynne Jones
http://en.wikipedia.org/wiki/Diana_Wynne_Jones
「ハウル」原作者 ダイアナ・ウィン・ジョーンズさんに聞く―前編
http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/ghibli/cnt_interview_diana.htm
タグ:FT
【読む。「ダイアナ・ウィン・ジョーンズ」の最新記事】