2012年02月26日

『マホロミ』と『ゲイルズバーグの春を愛す』

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マホロミ  冬目景:著

ゲイルズバーグの春を愛す
ジャック・フィニイ:著
福島正実:訳



ほぼ同時期に読んだこの二冊、
期せずして似た雰囲気を持つ作品だった。

一方は冬目景の漫画『マホロミ』。
いま一方はジャック・フィニイの短編集である『ゲイルズバーグの春を愛す』。

似た雰囲気と言ったのは、いずれの作品も、
建物や街が持つ過去の記憶が現代に蘇る点だ。

ところで、マホロミは、「幻を視る」の意味なのか?
造語っぽいけれど。どうなんだべ。

一組の歳若い男女が手をつないだ途端、
建物などが持つ過去の記憶を鮮明に視る。
(建物たち記憶、その届けられるメッセージを
受け取るのに、ふたりが必ず手をつなぐ必要はないようだけれど
ふたりが手をつないで建物などに触れるとより一層はっきりと
視ることができるみたいですね。)
手をつないで、というところで北斗と南を思い出したよ……。

ジャック・フィニイは、SFかFTか、その境目が
はっきりとしない作風なのね。
ハヤカワFTで出ているけれど、SFでもおかしくはない。
一人称で展開するお話が多いのが特徴かな。
『コイン・コレクション』(The Coin Collector)など、
身勝手な男に都合がよい展開で、ちょっとイラッとする。
これを読んでニヤリとする男とは、ちょっと距離を置きたいかもしれない。
この思考、あの時代の作家だから仕方ないのか……。
でも否定するばかりじゃあないの。
好きなところが無いわけじゃない。
『愛の手紙』(The Love Letter)での、古典的かもしれないけれど
しっとりと心が濡れるような趣きのある佳作もあるしね。
『大胆不敵な気球乗り』(The Intrepid Aeronaut)で語られる、
突然展開する非日常の世界への誘い方は、けっこう好きよ。

『マホロミ』は、もうなんて言うか、さくさくと単行本が
出ることを祈るばかりですよ。
いや、冬目作品だから、それは無理というものか……。

タグ:漫画
posted by よねっち at 21:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 読む。
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