
『魔術探偵スラクサス』
マーティン・スコット
内田昌之=訳
ああ、面白かった!
愉快痛快。
ダメな中年おじさんで、魔法もろくに使えない
大酒飲みで大飯食らい、でも憎めないのがスラクサス。
こういうオッサンが活躍するお話、好きです……。
(視野の狭い書き手が描きがちな)
美男美女が入り乱れ、びしばしと伝説の魔法を
唱えて争うのが良いファンタジーってわけじゃないのよう。
力のある魔法使いであっても、日に使える魔法は幾つかしかなく、
唱えたら覚えなおすまでは同じ魔法を唱えられないというあたり、
懐かしきDungeons&Dragonsを思い出します。
オッサンと美女の組み合わせ(しかもそこに恋愛関係は無い)って、
お話が自然と転がりだす良い要素になっていると思うの。
ビキニの美女給仕(しかも戦士。剣士?)マクリが
この混沌の街でスラクサスと共に活躍するのが
いと痛快。
ドラッグもやる、酒もやる、剣でオルク(オークか?)も切り倒す
二十歳の混血娘。
それだけなら「荒々しくて、ちょっとお近づきにはなりたくないタイプ」なのに
向学心溢れる姿が描写されたり、花に恥じらう一面があったりもする。
作者のマーティン・スコットったら、心得ていますね。
そんな娘っこになら、読者が惚れないわけがない。
なにより、スラクサスの「ダメなオジサンなんだけど、頑張る」姿にも、
読者は惚れる。
脇を固めるサブキャラクターたちも個性的で、その容姿が
容易に想像できる。
面白いよう、面白いよう〜。
日本では人気が無かったようで、邦訳の続編が出ていないのが信じられない。
こんなに面白いのになあ。
先日手に取った、ケリー・リンク『スペシャリストの帽子』が
受け入れられなかっただけに、今回マーティン・スコット『魔術探偵スラクサス』が
大当たりだったのが僕には嬉しい出来事。
(だってケリー・リンクは、「察してね?」って話の作りばかりで
読んでいて消化不良を起こしちゃうんだもの。
途中で読むのを止めてしまったわ。)
ところで、スラクサスは表紙絵のままの姿を想像しながら読みましたが
マクリは皇さんが描いたら、きっとこんなだったろうな、という
美女を想像しつつ読みました。
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