
ゼンダ城の虜(東京創元社)
アンソニー・ホープ 著
井上勇 訳
ぼくが今回読んだのは井上勇による完訳版ですが、
義母は原書で児童用の抄訳をすでに読んでいたそうです。
ただ、ストーリーはもううろ覚えだとか……。
確かに訳は古い、古さを感じるけれどそれで
作品の面白さが半減するわけでは決してない。
主役のほうのルドルフのいい男っぷりは、
バロネス・オルツィ『紅はこべ』のパーシーを思い浮かべながら読みました。
時代は異なりますけど。その正体を隠して華麗に異国へ……ってあたりが
似ていると感じたのかしらねえ。
でもちょっとツメが甘いよねえ、ルドルフ。
倒せるときに敵を倒しておかないとかさ……。
書かれた時代がそうした時代だったのかもしれないけどさ……。
しかし。
百数十年前に著された物語がいまも愛読されているのも
納得の出来栄え。
筋立てと、なにより登場人物たちの特徴あるキャラクターが
魅力的でぐいぐい読ませるんですね、これ。
いちどは読んでおくといいよなあ、学生時代にでも。
落ち着いた年齢になってから、忍ぶ恋についてあれこれ思いながら読むのもいいけど。
ぼくは凡人なのでこうしたルリタニア風のロマンスに
憧れはしても、平々凡々で身近な幸せがずっと傍に
あるのが良いなと思ってしまうのでした。
ゼンダ城の虜 東京創元社
http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488505011
アンソニー・ホープ 著
井上勇 訳
ゼンダ城の虜 Amazon.co.jp
http://www.amazon.co.jp/dp/4488505015